『パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー<永遠の3秒>』Robert Doisneau le révolté du merveilleux何て輝いているんだろう!ドアノーの信念と生きざま、そして彼が生きてきた「時代」から溢れるエネルギー。そのすべてが映画の中で輝いて見える。1912年に生まれ、1994年に他界したドアノーは文字通り、「20世紀」をかけぬけた写真家だ。自由の束縛を何より嫌った「反戦の人」は、パリ解放の希望に溢れた人々の写真をカメラにおさめる。そして、自由を謳歌する人々の写真を数多く残していく。まだ「広告代理店」が存在しなかった頃、ドアノーが撮った家族団らんの写真がさまざまな広告に採用された。被写体だった子供たちが、広告に使われた50年も前の写真をなつかしそうに見て笑うシーン。その中で、ひとりが「カトリック系の雑誌からも、コミュニスト系の雑誌からもまったく同じ写真の依頼が入ったのよ!」と笑う。なんて、自由でおおらかな時代だったんだろう、と思う。美しい数々の写真の合間に現れる、ロベール・ドアノー本人の穏やかな表情と、お茶目ないくつかのコメントが微笑ましい。日本での上映に向けて、本作の監督であり、孫娘としてロベール・ドアノーと多くの時間を過ごしたクレモンティーヌ・ドルディルさんが来日。東京都写真美術館ホールでの上映初日、写真家のハービー・山口さん、同じく写真かの平間至さんを交えてのトークショーが行われた。そこで語られたのは、「孤独の人」というドアノーの一面だった。7歳という甘え盛りの年で母親と死に別れ、彼はカメラを持つことで初めて世界と一体化したという。「祖父は、消防士がヘルメットをかぶるように、カメラを手にしました」と語るドルディルさん。不幸せだったからこそ、「幸せを撮る写真家」となりえたのだと。「祖父は、自分のためでなく、人々への贈り物として写真を撮り続けました。私が祖父を愛したように、みなさんも祖父の写真を愛してほしいと思います」。そんな孫娘の愛に満ちたこの映画は、私たちの心をほんのりとした桜色に染めてくれる。(文 Mika Tanaka)監督:クレモンティーヌ・ドルディル出演:ロベール・ドアノー、ダニエル・ペナック、サビーヌ・アゼマ、ジャン=クロード・カリエール、堀江敏幸2016年/80分
『パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー<永遠の3秒>』Robert Doisneau le révolté du merveilleux