『ザ・ダンサー』La danseuse時は19世紀。奔放な父親と2人で田舎暮らしをしていたマリー=ルイーズ(ソーコ)は、父の死をきっかけに、ニューヨークの母の元へ身を寄せる。女優に憧れ、写真のモデルや芝居の脇役を健気に演じる彼女に、あるとき幸運の女神が微笑む。観客席から喝采を浴びたマリー=ルイーズは、ロイ・フラーという芸名をたずさえ、新しい芸術に挑み始める。振り付け、衣装、照明—— ロイのビジョンは「女優」という枠をどんどん超え、その活躍の場はニューヨークからパリへと移っていく。モデルとなった人物は、ベル・エポックのパリに熱狂を巻き起こし、マネの絵『フォリー・ベルジェール』でも知られる、モダン・ダンスの先駆者、ロイ・フラー。照明の色や角度にこだわり、シルクの衣装が暗闇の咲く花のように美しく見えるよう、自らに過酷な動きを課した彼女の舞台裏を、写真家出身のステファニー・ディ・ジュースト監督は、克明に描いた。華麗な舞台の最中に聞こえるロイの激しい息づかい、あざだらけの肩、過剰なほどの劣等感……映画の後半から登場するイサドラ・ダンカン(リリー=ローズ・デップ)との対比は痛ましいほど。そんな「自信のない成功者」だからこそ、彼女を支えるガブリエル(メラニー・ティエリー)や、マルシャン(フランソワ・ダミアン)らの存在感が大きく感じられる。ロイを愛し、傷ついていくルイ・ドルセー伯爵(ギャスパー・ウリエル)の繊細な心の動きが、なんとも切ない。(Mika Tanaka)監督:ステファニー•ディ•ジュースト出演:ソーコ、リリー=ローズ•メロディ•ディップ、ギャスパー•ウリエル、メラニー•ティエリー2016年/フランス•ベルギー•チェコ/フランス語•英語/108分/PG12
『ザ・ダンサー』La danseuse