『チャップリンからの贈り物』
1978年、チャップリンの死後およそ2ヶ月後の3月、全世界中を駆け巡る驚愕の事件が起こった。スイス・レマン湖畔のヴヴェイ墓地に埋葬されたチャップリンの遺体が棺ごと盗まれ、犯人が身代金を要求したのだ。本作はその実際に起こった事件に基づいた、喜劇王チャップリンへのオマージュが随所に詰め込まれた作品である。つねに弱者の味方であったチャップリンが、人生どん底のふたりへ幸せの贈りものをする。優しいふたりの友情に訪れる幸福に、ラストは涙を流さずにはいられない。
この映画で何といっても素晴らしいのが、巨匠ミシェル・ルグランにより彩られた音楽の数々である。あらゆる場面に散りばめられた音楽が、映像に壮大さを与え、コミカルな二人の演技に愛情と深みを与えている。また、チャップリンの遺族の全面協力のもと、実際の邸宅や墓地をロケ地に、チャップリンの息子や孫が特別出演している点でも一見の価値のある作品である。(半田麻夕)
監督:グザヴィエ・ボーヴォワ
出演:ブノワ・ポールヴールド、ロシュディ・ゼム、キアラ・マストロヤンニ
2014年/115分
La rançon de la gloire de Xavier Beauvois avec Benoît Poelvoorde, Roschdy Zem, Chiara Mastroianni …; 2014, France, 115mn