『愛して飲んで歌って』『夜と霧』(55)、『二十四時間の情事』(59)、『去年マリエンバートで』(61)などの数々の傑作を生み出したフランス映画界の巨匠、アラン・レネ監督。本作は、2014年3月1日に逝去した彼の遺作である。アウシュヴィッツ収容所でのホロコーストを告発したドキュメンタリーである『夜と霧』、原爆の被害を受けた広島を舞台にした『二十四時間の情事』、現実と幻想が交差する審美的作品『去年マリエンバートで』などの作品で、日本では、前衛的で難解な作品の監督として受け入れられがちなアラン・レネ監督であるが、遺作となる本作は、難解さはなく、文学、演劇、音楽、コミックといった様々なジャンルを融合させた様な軽やかでチャーミングな人間ドラマである。舞台となるのはイギリス、ヨークシャー郊外。カリスマ的な魅力を持つ高校教師のジョルジュ・ライリーの友人である3組の夫婦の間でドラマが展開する。3組の夫婦は、友人ジョルジュが末期ガンで余命わずかと知らされて大慌て。彼らは、愛すべき旧友の残り少ない人生を良きものにしようと一致団結するのだが、過去にジョルジュと関係のあった女たちは彼をめぐって火花を散らし、男たちは胸にくすぶる思いを抱えて右往左往することに。そんな人気の的のジョルジュとは、いったいどんな人物なのか…。フランスのバンド・デシネ作家であるブルッチによる舞台の様な書き割りの中で物語が展開したり、劇画のようなモノクロの背景で人物が語りだしたりといった、常に新しいことに挑戦し続けたレネ監督らしい遊び心に溢れている。人生の複雑さ、面白さ、そして素晴らしさを教えてくれる、巨匠の若々しいメッセージが込められた作品である。監督:アラン・レネ出演:サビーヌ・アゼマ、イポリット・ジラルド、カロリーヌ・シオル2014年/108分Aimer, boire et chanter d’Alain Resnais avec Sabine Azéma, Hyppolite Girardot, Caroline Silhol; 2014, France, 108 mn
『愛して飲んで歌って』Aimer, boire et chanter