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『女の一生』Une vie
© TS PRODUCTIONS (PHOTO MICHAEL CROTTO)-AFFICHE NUITDECHINE

『女の一生』
 
  自然主義文学の立役者のひとり、モーパッサンのこの長編小説はあまりにも有名で、それゆえ、紋切り型のこんなイメージが先行しているような気がする。「世間知らずのお嬢様が運命に翻弄されながら不幸になる話」。もし言葉をうのみにして映画を観たら、印象はだいぶ変わるのではないだろうか。舞台は19世紀初頭のノルマンディー。自然豊かな故郷で、ジャンヌ(ジュディット・シュムラ)は、自らの意志で伴侶を選ぶ。この時代には珍しいことだ。そして、自ら選んだ夫の不誠実さによって苦しむ。その苦しみの責任を誰に押し付けるでもなく、ジャンヌは自分自身の心で受け止めた。神父の導きを受け入れることもあれば、かたくなに拒むこともある。子供を盲目的に溺愛しているようにも見えるが、ジャンヌの子育て論は理にかなったところもある。「だまされている」と言われながらも、子供の言葉を最後まで信じる……私が思っていた『女の一生』は、受け身的な女性が流されるまま生きる人生だったけれど、ジャンヌの生きざまはそれとは真逆だった。ステファヌ・ブリゼ監督がどれだけジャンヌを愛おしく思っていたか、ジャンヌの美しい横顔からそれが伝わってくる。今でも心に強く残っているのは、「真実と嘘」について語る神父と、迷いながらも自分の意志を曲げないジャンヌのシーン。このときのジャンヌに『婚約者の友人』の主人公・アンナを重ねた。また、原作者のモーパッサンは『セザンヌと過ごした時間』のエミール・ゾラと活動をともにし、『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』のロダンと同じ時代を生きた人だ。もしも自由な時間が丸1日取れることがあったら、ここに挙げたすべての作品をまとめて観てほしいと思う。(Mika Tanaka)
 
監督:ステファヌ・ブリゼ
出演:ジュディット・シュムラ、ジャン=ピエール・ダルッサン、ヨランド・モロー、スワン・アルロー、ニナ・ミュリス、ほか
2016年/119分
 
Une vie de Stéphane Brizé d’après Guy de Maupassant avec Judith Chemla, Jean-Pierre Darroussin, Yolande Moreau, Swann Arlaud, Nina Meurisse; 2016, France, 119 mn
 
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