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『ヴァンサンへの手紙』J’avancerai vers toi avec les yeux d’un sourd
© Kaléo Films

『ヴァンサンへの手紙』
 
「魂で聴けるなら、聞こえなくて何の問題がある」
「本当に問題なのは有識者の聞く耳を持たない姿勢だ」
  ろう者の集会に招かれたヴィクトル・ユゴーの、この言葉にはっとする。
「聞 く」とはどういうことなのか?話を聞き流すだけで、話し手を理解する姿勢がなければ、聞くことに何の意味があるだろうか。自己を否定され、深い孤独を知って いるろう者の方が、もしかすると聴者よりも人の心を理解する力があるのではないかと感じる。レティシア・カートン監督は、1990年代の後半にろう者のヴァンサンと出会い、ろう者のドキュメンタリー映画を2人でつくろうと約束。しかし、ヴァンサンは10年前に自らの命を絶ってしまう。ろう者として、LGBTと して生き続けたヴァンサンへ文を綴るように、レティシアは映画を撮り続けた……なりたい自分になるためにさまざまな壁を乗り越え、教師になったステファ ヌ。親の愛を信じられず、親からの拒絶を感じているパトリック。芝居の稽古にいそしむレヴェント。この映画に出るろう者たちは、決してあわれむべき障害者 ではない。1人ひとりに個性があり、ろう文化という豊かなバックグラウンドがある。
  本作を日本に配給したのは、映画監督であり、自身もろう者である牧原依里さん。牧原さんは、私たちに”最初の一歩”を踏み出す機会を与えてくれた。もしあなたが聴者なら、映画を観ることでろう者に対する理解の扉を開けたことになる。もしあなたがろう者なら、この映画で、新しい仲間たちと出会うことができる。”J’avancerai vers toi avec les yeux d’un sourd”(ろう者の視点であなたに寄り添う)という美しい原題は、ケベック出身のシンガーソングライター・映像作家のリシャール・デジャルダンの曲、“Quand j’aime une fois, j’aime pour toujours” (1度好きになったら、永遠に好きになる)という歌詞からヒントを得たという。ヴァンサンへ綴った長い手紙が、無事天国に届きますよう。 (Mika Tanaka)
監督:レティシア・カートン
2015年/112分/フランス語・フランス手話/ドキュメンタリー
 
J’avancerai vers toi avec les yeux d’un sourd documentaire de Laetitia Carton; 2015, France, 112 mn
 
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