『トリとロキタ』

イタリア料理店で、歌を歌う2人のこども。男の子は小学生だろうか。女の子は10代半ばから後半に見える……男の子の名前は、トリ。自由を求めてアフリカのベナンからヨーロッパへ渡る途中、カメルーン出身のロキタと出会ったのだ。血の繋がった姉弟ではないけれど、2人の絆の強さはそれ以上かもしれない。

歌ってお金を稼ぐ2人には、もうひとつの仕事がある。シェフのベティムから預かった麻薬の運び屋だ……ぎりぎりのところで支え合って生きるトリとロキタ。年上であり、女性であるロキタにおそいかかる困難、それを助けることができずにいるトリ。非力であっても生きることをあきらめない2人の姿を、ダルデンヌ兄弟は静かに淡々と描く。フィクションのはずなのに、トリもロキタも実在するかのように感じてしまう。彼らに救いはあるのだろうか。ないようにも見えるし、あるようにも見える。そのわずかな差をうめるために、私たちにできることは何だろうか。まっすぐで曇りないトリの目、その奥にしまった悲しみを忘れずにいたい。（Mika Tanaka）

監督・脚本：ジャン＝ピエール＆リュック・ダルデンヌ

出演：パブロ・シルズ、ジョエリー・ムブンドゥ、アウバン・ウカイ、ティヒメン・フーファールツ、シャルロット・デ・プライネ、ナデージュ・エドラオゴ

2022年／ベルギー・フランス／89分

 

Tori et Lokita de Jean-Pierre et Luc Dardenne avec Pablo Schils, Joely Mbundu, Alban Ukaj, Tijmen Govaerts ;2022, Belgique, France, 89 min

 

https://bitters.co.jp/tori_lokita