『Rodeo ロデオ』「いいかげんにしなさい!」育児で追い込まれる母親がこどもに怒りをぶつける。ありふれている一場面に見えるが、彼らの状況は決してありふれているとは言えない。母親の名はオフェリー(アントニア・ブレジ)。夫のドミノ(セバスティアン・シュローダー)は服役中だが、離れた場所で母子を支配し監視の目を緩めない。外部との接点は、週に1回、ジュリア(ジュリー・レドゥル)が買い物の品を届けるときだけだ。バイクだけが支えのジュリアにとって、バイクを通して知り合った仲間たちは唯一の居場所。そして彼らのボス・ドミノを紹介され、バイクの窃盗に手を染めることになる。仲間のカイス(ヤニス・ラフキ)はジュリアに好意を寄せるが、ジュリアは恋人という関係に興味を示さない。彼女が心を許すのは、週に1回、わずかに会話を交わす幼いキリアン(コーディ・シュローダー)と母親のオフェリーだけだ。ほんのひととき、外出禁止の2人をバイクに乗せたジュリアは、爽快な風に吹かれながら母子と”自由”を共有する。画面いっぱいに解放感が漂う。しかし、ジュリアがどんなにオフェリーを目覚めさせようとしても、オフェリー自身は夫の支配から逃れようとはしない。そしてジュリアもまた、何かに束縛されているかのように、逃れようのない闇へ突き進んでいく……ジュリアの辿り着く場所は、映像としては美しいが物語としてはあまりにも悲しい。キリアンが”Maman!“と母親を呼ぶラストシーンに心救われる。(Mika Tanaka)監督・脚本 : ローラ・キヴォロン出演:ジュリー・ルドリュー ヤニス・ラフィ アントニア・ブレジ2022年/105分/フランスRodéo de Lola Quivoron avec Julie Ledru, Yanis Lafki, Antonia Buresi, Cody Schroed; 2022, France, 105 min
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