L’art du silence 『マルセル・マルソー 沈黙のアート』よれよれの帽子に赤い花。顔を白く塗った人物がいる。名前はビップ。この人物は、何にでもなれる。男にも女にも、風にも花にも木にもなるし、神になることもできる。よりよい世界を夢見て……沈黙を守り、ビップの身体表現にすべてを託し、世界中を旅したマルセル・マルソー。ユダヤ系の家庭に生まれ、父はゲシュタポに連行される。彼はレジスタンスの活動に身を投じ、ユダヤ系の孤児300人あまりをスイスに送った。マルセルの娘のひとりカミーユが、父の筆跡をたどる。パリ解放で湧き上がる人々の様子が記されている。彼は嬉しくなり、同時に胸が苦しくなった。そして”孤独”を欲したそうだ。アウシュビッツで亡くなった父のことを思い出したのだ。ビップ誕生には、そんな背景があった。監督は、マウリツィウス・シュテルクレ・ドルクス。映画の冒頭に登場するろうのパントマイマー、クリストフ・シュテルクレは彼の父だ。父を通して知ったパントマイム、そしてマルセル・マルソーについて、自分自身の心で解釈し、映像として残した。本作では、マルセル・マルソーを知る複数の人物がマルセルを語り、彼の輪郭をくっきりと描いていく。マルセルの妻、2人の娘、そして孫。16歳のルイ・シュヴァリエは、祖父のことをよく知らない。が、今はダンスを学びながら、心の中で祖父との対話を続ける。レジスタンス活動を共にした従兄弟のジョルジュは108歳を目前に控え、1日1日を大切に生きている。マルセルが子供たちを”魔法使いのように”救ったことを今も忘れない。マルセルのもとで学んだ弟子のひとりロブ・メルミンは、パーキンソン病を患った後、パントマイムの技法でパーキンソン病の症状の改善、緩和に取り組む活動を始めた。マルセル・マルソーがこの世を去ってから16年の月日が流れようとしている。それでも、彼が極めた芸術は残された人々の中で生き続け、進化を続けている。誰かの心を癒し、よりよい世界を築くために。(Mika Tanaka)監督・脚本 : マウリツィウス・シュテルクレ・ドルクス出演:マルセル・マルソー、クリストフ・シュテルクレ、アンヌ・シッコ、カミーユ・マルソー、オーレリア・マルソー、ルイ・シュヴァリエ、ロブ・メルミン、ジョルジュ・ロワンジェ、ダニエル・ロワンジェ2022年/85分/スイス=ドイツL’art du silence, documentaire de Maurizius Staerkle Drux avec Marcel Marceau, Anne Sicco, Camille Marceau, Aurélia Marceau; 2022, Suisse, Allemagne, allemand, français, anglais, 85 min
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『マルセル・マルソー 沈黙のアート』 L’art du silence
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