『ジャン=リュック・ゴダール反逆の映画作家(シネアスト)』“ET MÊME SI RIEN NE DEVAIT ÊTRE COMME NOUS L’AVIONS ESPÉRÉ,CELA NE CHANGERAIT RIEN À NOS ESPÉRANCES. »スクリーンいっぱいに広がる黒い画面に現れる文字。「たとえ希望が叶わなくても、我々は希望を持ち続ける」(字幕:齋藤敦子)という、ジャン=リュック・ゴダール 自身による言葉だ。映画はこの言葉で始まり、この言葉で終わる。デビュー作「勝手にしやがれ」で時代の寵児になったかと思うと、売れっ子となった自分自身を否定するような言動を取る。政治活動にめざめ。攻撃的な姿勢で映画製作に取り組むこともあった。交通事故で生死の境をさまよった後、新しい人生を歩み始めるかのように新しいキャリアを築き上げる……波乱万丈な人生を歩んだ人だった。彼を失った今、あらためて思う。何と純粋な人だったのだろうかと。「彼は子供のように傷ついていた」と、女優のハンナ・シグラは静かに語る。「親しくなると彼の背負う重荷に気づくようになる。閉じない傷口に」と語るのは、ゴダールの撮影に携わったジェラール・マルタン。彼にとって「映画製作」とは、その傷を埋めるための癒しだったのだろうか。反逆の人であり、弱者に寄り添い続けた偉大で不器用な映画作家ゴダール。彼がカメラにおさめた子供たちのなんと可愛いこと!そして、本作でゴダールを語る人々の言葉の一つひとつもまた、愛おしさに溢れている。(Mika Tanaka)監督:シリル・ルティ出演:マーシャ・メリル、ティエリー・ジュス、アラン・ベルガラ、マリナ・ヴラディ、ロマン・グーピル、ダヴィッド・ファルー、ジュリー・デルピー、ダニエル・コーン=ベンディット、ジェラール・マルタン、ナタリー・バイ、ハンナ・シグラ、ドミニク・パイーニ2022年/105分/フランスGodard, seul le cinéma de Cyril Leuthy avec Macha Méril, Alain Bergala, Thierry Jousse, Romain Goupil, David Faroult, Julie Delpy, Daniel Cohn-Bendit, Nathalie Baye; 2022, France, 105 min
「ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト)」 Godard, seul le cinéma