『落下の解剖学』真っ白な雪に流れる真っ赤な血。 フランスの人里離れた山荘の前で、1人の男性の死体が発見される。彼 の名は、サミュエル(サミュエル・タイス)。視覚障害を持つ11歳の息子ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)と、ベストセラー作家の妻サンドラ(ザンドラ・ヒュラー)、そして愛犬のスヌープと静かに暮らしていた。検察は妻のサンドラを殺人の容疑で起訴、サンドラは弁護士のヴァンサン(スワン・ アルロー)に助けを求める。検事(アントワーヌ・レナルツ)は、夫婦仲が悪かったとして、死の前日の激し い口論が録音されたUSBを証拠に取り上げる。息子ダニエ ルの証言だけが、サンドラの行く末を握ることになる。もし自殺だったら、父は自分を見 捨てたことになるのか?もし殺人だったら、父を殺したのは自分の母なのか?景色が見えない、真実が見えない、自分の記憶が正しく見えてこ ない……声変わりを迎える前の少年が、感情に流されず、知りうる事実だけを語らなければならない。どんなに忠実であろうとしても、嘘をつ くつもりがなくても、ぶれが生じても不思議はないだろう。小さな体に課せられた荷はあまりにも重い。自分の語るべきことが何なのかを 悟った彼は、父をかばうのではなく、母を救うのではなく、自分が聞いた言葉と体験した出来事を冷静に再現する。見えないはずの彼の目の奥 にある「何か」に、心が吸い寄せられる。(Mika Tanaka)監督:ジュスティーヌ・トリエ脚本:ジュスティーヌ・トリエ、アルチュール・アラリ出演:ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール、アントワーヌ・レナルツ152分/2023年/フランスAnatomie d’une chute de Justine Triet avec Sandra Hüller, Swann Arlaud, Milo Machado-Graner, Antoine Reinartz; 2023, France, 152 min