『ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争』2022年9月。どれだけの人が彼を悼んだだろう。世界の映画界を揺さぶり、時代の寵児となったジャン=リュック・ゴダール。病に苦しんだ彼は、自らの意志で死を選んだ……そんなゴダールの最後の作品は、まるで本のようであり、展覧会のようであり、友人との会話のようでもある。ゴダールの手書きの文字、ゴダールの選んだ絵や写真、そして映像が映し出され、ゴダール自身が彼の声で熱く静かに語る。大がかりなセットがあるわけではなく、大人数のクルーがいるわけでもない。華やかなキャストもそこにはいない。コロナ禍を乗り越えて完成したこの短編には、最後まで映画作家としてこの世界に真摯に向き合った彼の生きざまが刻印されている。―−もう少しだけ肩の力を抜いてもよかったのに、と思うだろうか。−―自分のすべてを捧げた潔さに敬礼したくなるだろうか。―−あるいは、あまりにも純粋なその魂に触れ、自分の通ってきた道、これから行こうとする道を忘れてしまうだろうか。私たちはゴダールのいない世界にいて、これからもその世界で生きていく。しかし、彼の遺言(遺作)が届いた今、何かが少しだけ変わったような気がする。肉体が滅びようとも消えることのない確かなものがあることを、ゴダールが教えてくれているのかもしれない。(Mika Tanaka)監督・脚本・出演:ジャン=リュック・ゴダール2023年/20分/フランスFilm annonce du film qui n’existera jamais : « Drôles de guerres » de Jean-Luc Godard; 2023, France, Suisse, 20 min
『ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争』 Film annonce du film qui n’existera jamais : « Drôles de guerres »