『パリ・ブレスト 〜夢をかなえたスイーツ〜』つらいとき、悲しいとき、さみしいとき。そんなとき彼は、お菓子作りに没頭する。その甘さと美しさが、彼の心を癒す。お菓子作りが彼の居場所となった……彼の名はヤジッド(リアド・ベライシュ)。父親が誰かは知らない。母親(ルブナ・アビダル)からの愛を感じることができない。それでも、里親とその家族には恵まれた。友達もいる。高級ホテルの厨房で幸運にも仕事を得ることができたヤジッドは、毎日180キロ離れた寄宿舎から電車に乗ってパリへ向かう。トラブルに巻き込まれて出勤が遅れたときは必死に窮状を訴え、終電に乗り遅れたときは野宿をしてしのいだ。数年の時が経ち、ヤジッドはコートダジュールへ。最高級ホテルの厨房でさらに腕を磨き続ける日々。しかし、彼が寝起きするのはホテル前のビーチだ。夜空の星を眺め、朝は簡易シャワーを使って出勤する。屈託のない笑顔と、決してあきらめない前向きな姿勢。理想とはほど遠い幼少期を過ごしても、ヤジッドには夢を叶えるために必要なものが備わっていた。しかし、それを手放さない努力は並大抵のものではなかったはずだ。みじめな思いをすればするほど、孤独を強く感じれば感じるほど、彼の作るお菓子は洗練を極めていったのだろう。監督は、これが長編デビューとなるセバスチャン・テュラール。がんで闘病中だった彼のもとに届いた脚本が「早く退院して映画を撮りたい」と彼の情熱を呼び覚ました。実在のパティシエ、ヤジッド・イシュムラエンによる実話をベースとしたこの映画が、夢をあきらめかけている若者たちのもとに届きますように。(Mika Tanaka)監督:セバスチャン・テュラール脚本:セドリック・イド出演:リアド・ベライシュ、ルブナ・アビダル、クリスティーヌ・シティ、パトリック・ダスマサオ、フェニックス・ブロサール、リカ・ミナモト110分/2023年/フランスÀ La belle étoile de Sébastien Tulard avec Just Riadh, Loubna Abidar, Christine Citti, Patrick d’Assumçao, Phénix Brossard;2023, France, 110 min
『パリ・ブレスト 〜夢をかなえたスイーツ〜』 À La belle étoile