その場所は、広い駅の構内にある。電車で東京駅に着いて、丸の内北口の改札を出てすぐ。1914年、辰野金吾の設計によって創建された旧駅舎の面影を残したレンガ造りの展示スペースは、時間がゆっくりと流れていく。海の底のような青、りんごのような赤、夕陽のようなオレンジ……美しい色彩を、簡素な輪郭が包み込んでいるように見える。7月13日から開催されているのは、ベルギー出身のジャン=ミッシェル・フォロンの作品の数々。日本で30年ぶりの回顧展には、初期のドローイング、水彩画、版画、ポスター、晩年に手がけた立体作品など、約230点が並ぶ。展示室に入ると、1970年代にフランスのテレビ局で使用されたフォロンの短編アニメーションが優しいメロディーに乗って流れる。のびやかな映像の奥底に漂う哀愁、それこそが、世界中の人を惹きつけてやまないフォロンの魅力なのだろう。そのまま進んでいくと、青字に赤の「?」が目に飛び込む。タイトルは「われ思う。さりとて何を?」(Je pense mais à quoi?) 。緊張が一瞬でほどけ、微笑んでしまう。そんなお茶目な一面があるかと思うと、現代社会に警鐘を鳴らす作品も。都市化が進む中、取り壊されてしまった「大切な何か」を、きっと彼は形に残そうとしたのだろう。描くことで、あるいは彫刻に挑むことで、私たちが決して忘れることのないように。フォロンの作品に「攻撃」という言葉は似合わない。しかしそこには静かな「抵抗」が、品格ある「意思表示」が確かに存在する。アムネスティ・インターナショナル日本と谷川俊太郎さんの翻訳による「世界人権宣言」と共に並ぶフォロンの挿絵を見ていると、うっすら涙がにじむ。 (Mika Tanaka)<展覧会概要>会場: 東京ステーションギャラリー〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-9-1会期 : 2024 年 7月 13日(土)〜9月23日(月)開館時間 : 10:00 〜 18:00 (金曜日は20:00まで開館、入館は閉館30分前まで)休館日:月曜日(8月12日、9月16日、9月23日は開館)入館料(当日券):一般 1,500円 大学生・高校生1,300円 中学生以下無料※ 障がい者手帳等持参の場合は入館料から200円割引(介添者 1 名無料)問い合わせ電話番号:03-3212-2485美術館公式サイト : https://www.ejrcf.or.jp/gallery
読者プレゼント招待券を5組10名様にプレゼント!<応募方法>メールにてご応募下さい。件名には下記の質問の答えをフランス語で記入し、またメッセージ欄にはお名前(ローマ字、日本語)を明記してご応募下さい。当選された方は、チケット郵送用に84円切手を貼付した封筒(住所の記入もお願いします)のご用意をお願いしております。質問 「Jean-Michel Folon était de quelle nationalité? 」締め切りは2024年7月29日(月)、正午です。複数の応募は可能ですが、1つのプレゼントにつき1通のメールをお願いしております。