『ベルナデット 最強のファーストレディ』厳格で保守的、そして古風。つまり「時代遅れ」で「気難しそう」。それが 彼女の印象だった。1995年から2007年、フランス共和国大統領に就任していたジャックシラクの妻、ベルナデット シラク(カトリーヌ ドヌーヴ)。よき妻として夫を陰で支えよき母として娘たちに寄り添ってきた彼女が、「控えめなシラク夫人」から「賢明なファースト レディ」へと変身を遂げるまでの日々を、コミカルにテンポよく描いたのがこの映画。自由な発想や演出が嫌味なく生き生きとしているのは、外してはならない事実を正確におさえているからなのだろう。監督は、本作が初監督となる、レア ドムナック。ジャーナリストの父が書いた記事を読みながら育ち、「政治」は彼女の人生の大きなテーマとなった。ベルナデット シラクのドキュメンタリーと出会ったとき、ベルナデットの一般的なイメージと実像が大きくかけ離れていることを知り「女性のリベンジ」という切り口で映画を撮ろうと思い立つ。良質の脚本の価値を見抜いたカトリーヌ ドヌーヴの演技も素晴らしい。軽やかなコメディセンス、決して失うことのない品性……年を重ねれば重ねるほど美しくなるその秘訣はどこにあるのだろう?カール ラガーフェルドが新しい服を彼女に届けるシーンは必見。心にささったイガイガしたトゲを溶かしてくれる、上質のコメディ映画に拍手。(Mika Tanaka)監督:レア・ドムナック出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ドゥニ・ポダリデス、ミシェル・ヴュイエルモーズ、サラ・ジロドー2023年/フランス/93分Bernadette de Léa Domenach avec Catherine Deneuve, Denis Podalydès, Michel Vuillermoz, Sara Giraudeau; 2023, France, 93 min
『ベルナデット 最強のファーストレディ』 Bernadette