オディロン・ルドン
《ペガサス、岩上の馬》
1907-10年頃
パステル/紙
80.7×65cm
ひろしま美術館優しい人だったのだろう。会場の入口近くに展示された自画像は、キリッとした目線で私たちを見つめる。一見近寄り難そうな印象もあるのだが、会場を回っているうちに彼の顔をもう一度見たいと思い始める。すべての絵を見終えた後、再びルドンの自画像に戻る。そのとき、彼の心いっぱいに広がる”命”への愛が見えてくるのだ。はっとさせられる1枚がある。「わが子」(Mon enfant/ 1893年)と名付けられた、リトグラフ。子供のあどけない容姿は成長によって変わっていく。その瞬間のあどけない輪郭を永遠にとどめようとする思いが伝わってくる。そのとなりには、ほのかにあたたかみのある色で彩られたベアトリーチェ(Béatrice/ 1897年)が。ミステリアスな黒から、色彩に溢れた世界へと向かうルドンの歩みが感じ取れる。ルドンは”命”を描く画家だった。小さな虫に、無言の植物に、ルドンはまなざしを注ぐ。愛おしいわが子をみつめるように。彼はときとして食卓の卵に、空に浮かぶ気球に命を見る。それらに目や顔を描くことで、物体は命を宿す。クロード・モネと同じ1840年に生まれたルドンは、”光”を描こうとしたモネと対照的な存在として語られることがある。しかし彼が残したモノクロームの世界は、光の真逆にある闇とは異なるような気がする。うっすらとした黒、深い黒、青みがかった黒……グラデーションの中から見えてくるのは、好奇心に溢れた子供のようなみずみずしい感性だ。(Mika Tanaka)会場:パナソニック汐留美術館(東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4F)会期:2025年4月12日(土)~6月22日(日)開館時間:10:00~18:00 ※夜間開館日は10:00~20:00(入館は閉館30分前まで)夜間開館日:5月2日(金)、6月6日(金)、6月20日(金)、6月21日(土)休館日:水曜日(ただし6月18日は開館)入館料:一般:1,300円/65歳以上:1,200円/大学生・高校生:800円/中学生以下:無料※障がい者手帳提示の場合は、付添者1名を含め無料問い合わせ:ハローダイヤル 050-5541-8600
『オディロン・ルドン ―光の夢、影の輝き』
投稿日 2025年4月21日
