フラン•パルレ Franc-Parler
La francophonie au Japon

Rédaction du journal:
Rédacteur en chef: Éric Priou
Rédaction: Karen, Mika Tanaka

La francophonie au Japon
Franc-Parlerフランス語圏情報ウェブマガジン フラン・パルレ
〒169−0075新宿区高田馬場1−31−8−428
1-31-8-428 Takadanobaba, Shinjuku-ku, 169-0075 Tokyo

Tel: 03-5272-3440
E-mail:contact@franc-parler.jp
http://franc-parler.jp

ジャック・ル−シェ、音楽家
投稿日 2005年2月1日
最後に更新されたのは 2023年5月25日
ジャック・ルーシェ:クラシックとジャズの間を遊ぶ
 
ジャック・ルーシェ氏が昨年12月、3年ぶりに日本ツアーをしました。
彼を世に出すきっかけとなったアルバム『プレイ・バッハ』発表45周年、トリオ(ピアノ、コントラバス、ドラム奏者)再結成20周年、そして70歳の誕生日と、祝福に満ちた来日になりました。
 
© Franc-Parler

フラン・パルレ:ジャズとクラシック、最初はどちらの勉強をしていたのですか。
ジャック・ルーシェ:もともとクラシックの道を歩んでいました。パリの国立音楽院でクラシックピアノから始めましたので。
 
フラン・パルレ:シャルル・アズナブールなどの歌手の伴奏をしていたことで、音楽の方向性が変わったのですか。
ジャック・ルーシェ:いいえ。それ以前からです。シャルル・アズナブールやカトリーヌ・ソヴァージュのステージで弾いていたのは、まだミュージシャンになって間もない時期でした。昔から、バッハを弾くときはいつも即興でアレンジして弾いていたので、とくに私の音楽の方向性が変わったわけではありません。子供の頃にピアノを始めたときから、このような即興音楽が楽しくて、弾きながら遊んでいました。つまり即興で、ちょっと変化をつけたものを弾いていたのです。
私が即興演奏をしていたのと同じ時期に、モダン・ジャズ・クァルテットというグループがいたのですが、彼らからトリオを作るアイディアを得ました。こうして、1959年、バッハをジャズ風にアレンジした最初のアルバムを発表しました。
 

フラン・パルレ:ファーストアルバムが成功して、デビューから勢いにのっていましたね。
ジャック・ルーシェ:当時、その半世紀の間に類をみないアルバムだったからではないでしょうか。それまで誰もバッハに手を加えるようなことはしませんでしたから。私が初めてやったのですが、ちょっとした革命でした。作った4,5枚のアルバムは、いずれもゴールドディスクになりました。昔は、100万枚売れないとならなかったのですが、今は5万枚ですからね。ずいぶん変わりました。
 
フラン・パルレ:いつも他の音楽家の作品をベースに、自身の作品を作っているのですか。
ジャック・ルーシェ:ヴィヴァルディやバッハ、他の人の楽曲からインスピレーションを膨らませることを大切にしています。1996年から、サティやドビュッシー、ラヴェルの曲をアレンジし、最近ではヘンデル、パッヘルベル、マラン・マレのバロック音楽からアルバムを作ったりと、たくさん面白い試みをしています。でも、他に、私自身から湧き立つインスピレーションだけで作った作品もたくさんあります。音楽家はみな、他の人の作品を聴いて、自分の音楽を作りたくなるものです。音楽の世界はそういうものだと思います。
 
フラン・パルレ:映画音楽やテレビ関係の音楽も作りましたね。
ジャック・ルーシェ:色々なことをやってきました。1960年から64、5年まで、他のミュージシャンのために編曲をたくさんしました。この時期は、テレビ番組の曲をたくさん作っていた時期でもあります。『Thierry la Fronde』や『Rocambole』、『Vidocq』などのテレビドラマの曲も作りました。映画音楽やコマーシャルソング、協奏曲などを作りました。協奏曲は、よく他のミュージシャンによって今も演奏されています。また、コーラスやオーケストラ、ソロのミサ音楽も作りました。本当に音楽一筋の人生です。即興音楽は一部分で、他にもたくさんのことをしてきました。
 

フラン・パルレ:音楽を通して表現したいことは?
ジャック・ルーシェ:私が感じることや、人々に感じてほしい空気、雰囲気を伝えることができればと思います。他のミュージシャンがやらないハーモニーを探して、クラシック音楽でもジャズでもない新しいジャンルを見つけたいと思っています。クラシックとジャズの中間にある音楽です。私の音楽を分類するのは難しいです。でも、この分類し難い音楽こそが、私が興味をそそられる音の世界なのです。
 
フラン・パルレ:たくさんの即興音楽を手がけていますが、その可能性の限界は?
ジャック・ルーシェ:インスピレーションが湧く限り、即興演奏することはできます。もし、インスピレーションを感じないならば、即興は短くするべきです。そうでないと、つまらない音楽になってしまいますから。でも、インスピレーションが湧き、素晴らしい即興音楽を作り上げたときは、本当に幸せを感じます。ミュージシャンとしての自分自身に与えることのできるささやかな喜びです。
 
フラン・パルレ:いつも同じミュージシャンと演奏していますが、なぜですか。
ジャック・ルーシェ:共に演奏するミュージシャンの一人一人を深く知ることは、私にとってとても大切なことです。私たちの即興音楽は、三人のミュージシャンから成り立っています。この三人が同じ一つの脳を共有して、一つの音楽を作り上げていきます。ですから、大変強い絆で結ばれています。いつも同じミュージシャンと仕事をすることは、自分たちで意識はしていなくても、即興演奏をする上で、より力強いものになります。
 

フラン・パルレ:レコーディングスタジオも所有していますね。
ジャック・ルーシェ:長い間スタジオを持っていますが、残念なことに以前ほどこれにはタッチしなくなっています。なぜならフランスのミディ地方から離れてしまいましたので。でもこのスタジオは素晴らしく、レコーディングしたいときにいつでもできるというもので、大変人気がありました。決められた時間などありません。夕食、昼食を好きなときにとって、レコーディングできます。ですから、とても心地のよい場所で、ここでレコーディングしたミュージシャンは、私たちにしょっちゅう会いに来てくれます。最高にハッピーな空間だからでしょうね。
 
フラン・パルレ:プロヴァンス地方にスタジオがあり、あなた自身はアンジェの出身ですが、パリのような大都市でなく地方で仕事をすることは大事なことですか。
ジャック・ルーシェ:地方で活動をするのは、どうしてもということではなく、選択肢の一つです。自然に囲まれたミラヴァルのスタジオのようなところで仕事をするのは、とても気分が良いものです。特に、プロヴァンス地方の自然は格別です。パリで仕事をするのもよいと思いますよ。グループのメンバーも、時々パリで活動をしています。パリでレコーディングをすれば、夜にはライブハウスや他で演奏もできますから、時にはいいでしょうね。ミディ地方だと、他のミュージシャンとのセッションはなかなか出来ないですからね。
 
2005年2月
インタヴュー:エリック・プリュウ
翻訳:三枝亜希子
協力:(株)エニー/ちけっとぽーと
qrcode:http://www.franc-parler.jp/spip.php?article208