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エレオノール・フォーシェ、映画「クレールの刺繍」監督
投稿日 2005年8月1日
最後に更新されたのは 2023年5月25日
エレオノール・フォーシェ:『クレールの刺繍』命の糸を紡ぐ
 
映画監督エレオノール・フォーシェは良い教育環境に恵まれた。そのキャリアはナントのリセ・ギストに併設された映画学校準備コースから始まった(このコースは3大陸の映画祭の共同主催者フィリップ・ジャラドウ氏が創設した)。教育課程の合間には多くの自主上映の催しがあり、彼女は映画館「ル・シネマトグラフ」に観に行っていた。必然的に彼女はルイ・リュミエール映画学校に進み、ジュニア・シナリオ部門(28歳以下)で最優秀賞を獲得して一つの区切りを迎える。そして彼女の初の長編映画『クレールの刺繍』の撮影が実現する。
 
© Franc-Parler

フラン・パルレ:いくつかの短編映画を撮った後、長編映画を手がけられましたね。ご自身のシナリオを発表することは、有利でしたか、不利でしたか?
エレオノール・フォーシェ:それは有利でした。フランスでは自分のではないシナリオでプロデューサーの説得に成功することはとても困難なのです。それにこうした映画のスタイル、つまり作者自身の映画では、実際に自分自身でストーリーを描いていくという大いなる真正さがあると私は思います。自分のストーリーと撮影の仕方にすごく愛着があるというか。
 
フラン・パルレ:何故あなたはこのテーマをご自身の初めての長編映画の題材に選ばれたのですか?
エレオノール・フォーシェ:私はテーマを選んではいません。思いつくままに筆をすすめて、後でこの物語に手を加えたのです。私はとりわけ年配の女性と若い女性の強制された関係、一緒に働いている必然からの関係が、だんだんに進展して、ある意味では別のものになっていく、というところにこだわりました。どんな関係にも実際には満足できる何かを見いだすことが出来るものです。本当にこの物語は少しずつ形になっていったのです。私は一つの題材を扱ってはいません。でも今、映画を観た後では扱っていると言えます。私は子供を持つことの責任を引き受ける、ということについて語っているのだと自覚していますが、当初は私もその辺りに行き着くとはわかっていませんでした。
 
Brodeuses

フラン・パルレ:映像や場面にはフェルメールの影響が多く見られますね。こういうタッチの絵画がお好きなのですか?
エレオノール・フォーシェ:いいえ、それは全く意図していません。要するに、明暗法と、たしかに、登場人物の女性が頭にスカーフをまいていますから、それがフランドル派の絵画を連想させるのだと思いますが、特に意識はしていません。私は実際20世紀初頭の画家が好みですし。おそらく撮影監督がフランドル派により感化されて、そのイメージを映画の中に盛り込んだのだと思いますが、我々の指向は絵画的よりもむしろ映像的でした。私は、撮影監督と美術監督にジェーン・カンピオン監督の作品『ピアノ・レッスン』を見せました。なぜならそれは私のとても好きな作品で、美的センスがとても良く、いい感じの配分だったからです。多すぎず、少なすぎず、うまくいった、というか。それからテレンス・マリックの作品で、例えば「天国の日々」とか。
 
フラン・パルレ:映画の学習課程では何が印象に残りましたか?
エレオノール・フォーシェ:映画の分析をたくさん学びました。私はいつも作品を観ながら、そしてそれに同じように魅せられた私の周りの人たちと議論し合いながら、学んでいます。私がそこから得たものは、本当に一言では言い表せないものです。それはこの作品に現れていると思います。いずれにせよ、私が映像についての知識教養を得たのは事実です。だから自分の中では映像からの観点がかなり強いと思っています。でも結局はそれだけではありません。私は音楽についても、登場人物や俳優が現実味のあるものであるかについても、とても注意をはらってきました。
 
フラン・パルレ:どのようにしてロケ地を選ばれたのですか?
エレオノール・フォーシェ:物語の舞台はアングレーム周辺に設定しました。ロケは一部ローヌ・アルプ地方で、一部はポワトゥー・シャラント地方で行いました。これは何よりも製作サイドの選択です、なぜならここは映画に沢山助成金を出してくれる地域だからです。ポワトゥー・シャラント地方も同様です。あとは、お陰様で、フランスの地方には実に多彩な風景があり、私はそこで見つけた景観にすっかり満足したのです。それに、もう一つの利点は、何よりも、リヨンの近くのヴィユールバンヌに、撮影スタジオがあるのですが、私の前からの望みの一つにメリキアン夫人のアトリエをスタジオ内に作るということがありました。それでそのことも可能になったということです。
 
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フラン・パルレ:俳優の選定はどのようになさったのですか?
エレオノール・フォーシェ:判断の規準はないのです、規準は無数にありますから。でもアリアンヌ・アスカリッドは、アンジェ映画祭で実際に出会ったのです。彼女がそこで私のシナリオを朗読したのです。この映画祭では観衆の為に最初のシナリオを読むという企画があり、主催者側が私の台本を読むのは彼女がいいのではないか、と私に推薦してくれたのです。それはとても強烈な、素晴らしい体験で、私はすべての脚本家にお勧めします。何故なら脚本の段階で、後で選定するのに、ものすごく参考になるからです。自分の台本が全体を通して、実際の流れで、俳優によって解釈されて聴こえるという過程で、うまく機能していない箇所がわかりますし、それに観衆の反応もあります。だからこれは本当に卓越したシステムだと思います。アリアンヌのことは主にロベール・ゲディギアンの作品を通じて知っていて、ある種のイメージが私の中にあったのですが、彼女に会った瞬間完全に崩れ去りました。なぜなら彼女は私に共感してくれているからです。私は彼女がこの機会にしてくれたシナリオの解釈がとても気に入ったので、彼女にその役を提案したのです。彼女についての唯一の問題は、彼女はこの役柄には少し若すぎると私が思ったことでしたが、彼女は即座に老けること、かたくなになることを承諾してくれました。私はヒッチコックの『レベッカ』に出てくる人物、とても陰気で、実直な、いかめしい感じの召使い頭の女性に着想を得たのです。そこからこのようなメリキアン夫人を創り上げたのです、そして彼女は完璧にこの役に入ってくれています。それに彼女はかなり外向的な役柄から脱してもっとずっと内にこもったものを演じることに満足していたと私は思っています。
 
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フラン・パルレ:受け継がれるもの、親子の関係といった問題はあなたの心をとらえるものですか?
エレオノール・フォーシェ:ええ、そうです、親子関係と伝承されるもの、実際それらは『クレールの刺繍』の中に現れていましたし、つぎの作品でも再び見られることでしょう。
 
フラン・パルレ:物語の解釈は男性が観るか女性が観るかによって変わりますか?
エレオノール・フォーシェ:物語の解釈は当然異なるでしょうが、私は父親もまた母親同様に自分の子供に責任を持つでしょうし、母親と同じ位、子供に受け継いでもらいたいものがあると思っています。
 
2005年8月
インタヴュー:エリック・プリュウ
翻訳:粟野みゆき
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