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男女の賃金格差(1)
投稿日 2013年5月29日
最後に更新されたのは 2019年5月14日
「イコール・ペイ・デイ」をご存知ですか
「イコール・ペイ・デイ」というのは、女性が男性と「同じ賃金を手にする日」のことで、男女の賃金格差を分かりやすくアピールするために、BPWIという国際組織が1990年代にアメリカで始めたのだそうです。
日本でも2012年から行われていて、今年2013年は4月15日がその日にあたりました。つまり、「昨年の1月1日から働き始めたとして、女性は今年の4月15日まで働いてはじめて男性が昨年1年間で得た賃金と同じ額の賃金を手にすることができる」というのです。(詳しくは、日本BPW連合会のホームページをご覧ください。
 
フランスでは2009年から行われていて、今年は4月25日でした。フランスの男女の賃金格差は27%で、年間労働日数を220日とすると、女性は男性より81日余分に働かなければならない計算になります。
こうした賃金格差は当然、退職年金にも影響します。2013年1月現在の資料によると、退職年金における格差はなんと53%、つまり男性100に対して女性は47しか受け取っていないということです。
賃金平等の要求は、フェミニストの要求ではなく、人間として当然の要求であると、フランスBPWの記事は訴えています。(詳しくは、BPW Franceのホームページをご覧ください。
 
ところで、フランスの「女性の権利」大臣は、この日、賃金平等のための措置を怠ったとして二つの企業に対する制裁を発表しました。そのうち一社(従業員150人)は、男女間の平均賃金に月額500ユーロの差があり、しかもこれを是正するための措置を怠っているという理由で、法に適した措置を取るまで、給与総額の1%にあたる月額5000ユーロを国庫に支払うことが命じられました。もう一社(従業員180人)は、これまで一度も法に定められた報告書を提出したことがないまま会社を売却したという理由で、一時金8500ユーロが課されたということです。(詳しくは、女性の権利省のホームページをご覧ください。
 
フランスでは、1972年12月22日法により「同一(価値)労働・同一賃金の原則」が定められ、さらに1983年7月13日の男女職業平等法(通称・ルーディ法)により採用・賃金・昇進・職業訓練などすべての領域における男女平等の原則が定められました。しかし、男女の賃金格差はなかなか是正されず、2006年3月23日の男女賃金平等法は、2010年12月31日という期限を設けたうえで、産業別・企業別の労使交渉により、その是正策を策定するように求めました。すなわち、従業員50人以上の企業は、職業平等に関する産業別協約によって、あるいはそれが及ばない企業では個別に具体的な行動計画書を作成し、それに基づいた労使交渉によって、男女平等を達成するための措置を取ることが定められました。この行動計画書は、使用者が毎年、交渉の場である企業委員会に提出することを義務づけられており、雇用・職業訓練・昇進・職能資格・職階・労働条件・実質賃金・職業活動と家庭責任の両立といった項目について、企業内での男女の比較状況を分析した数値指標を示さねばならないことになっています。特に賃金に関しては、1) 男女別の報酬対照表、2) 月収の平均および中央値、3) 報酬の上位十等級に含まれる女性の人数についての指標が求められています。
こうした義務づけにもかかわらず、行動計画書を提出する企業の数は少なく、ついに2010年11月9日の年金改革法では給与総額の最高1%の罰金が定められました。さらに2012年のデクレで処罰要件が厳しくなり、上にあげた項目のうち賃金は必須、従業員50~300人未満の企業には他に2項目、300人以上の企業には他に3項目を含むことが要請されました。今回初めて、こうした罰則が実際に適用されたわけです。
もちろん、罰するだけでは十分ではありません。国は男女平等のための啓発活動を活発に展開していく方針で、その一つとして[「職業上の男女平等」というサイトも開設されました。
 
           (井上たか子:フランス・ジェンダー研究 / 獨協大学名誉教授)
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