『死者』とその周辺
ジョルジュ・バタイユ著
吉田裕訳
Le Mort de Georges Bataille
書肆山田
価格:2800円+税
ISBN978-4-87995-897-6(
)
「今世紀最大の著作家」(ミシェル・フーコー)とも称され、日本では三島由紀夫に決定的な影響を与えたことでも知られる20世紀フランスの思想家・小説家、ジョルジュ・バタイユ。彼は生涯を通じ、理性に基づいた西洋哲学のありかたを批判し、死とエロティシズムの結びつきを探求し続けた。彼の生み出した思想・作品は、人々に大きな衝撃を与え続けている。
本書は、そんなバタイユの全作品のなかでも、彼の思想が高密度に結晶化された小説である『死者』と、作品理解に必要な関連テキストを一冊に収めたものである。『死者』の日本語訳はすでに出版されているが、本書は、これまでの翻訳で底本とされてきたテキストとは段落の構成、改行、表現が異なる、2004年刊行のプレイヤード版に基づいている。
作品冒頭で、主人公マリーの恋人であるエドゥアールが死ぬ。マリーは家の外に走り出て、酒場までたどり着き、そこで狂乱の一夜を過ごす…
『死者』において、バタイユは死とエロティシズムを結びつけることにより、「死」というものから神性を剥奪し、剥き出しの「死」に対峙しようとしている。その意味で、この作品は、バタイユが自らの思想を極限まで押し進めたものと言うことができる。激烈な作品を生み出し続けたバタイユの全作品の中でも、もっとも凝縮力が高く、悲劇的で、猥雑な作品である。