Chemins croisés
出版社:Pippa
価格:18ユーロ
フランス語圏の俳人による俳文のアンソロジー。俳文とは、俳諧趣味を帯びた文章のことで、多く俳句を文章に含んでいるものである。日本では松尾芭蕉の「奥の細道」などが有名だ。
俳文は日本で生まれた文学形式であるが、1990年代から最初に英語圏、ついでフランス語圏に紹介されるようになった。
フランス語圏の俳人によって書かれた俳文は、現在のところそれほど多くはなく、その歴史も古くはない。しかし、俳文は新しい文学形式として注目されており、優れた作品がだんだんと生み出されてくるようになっている。2011年にはフランス語圏俳文協会(Afah)が発足し、フランス語による俳文という文学形式の発展に努めている。日本において俳文は、古い文学と見られることが多いが、フランス語圏においては、新しい文学として、未知の可能性を秘めているのである。
本書に収められている俳文は、ベルギー、ブルガリア、カナダ、フランス、ルーマニア、スイス、チュニジアといったフランス語圏の俳人、51人による、51の作品である。その中には、フラン・パルレにインタビューを掲載している、ドミニック・シポの作品、「Les Gouttes de Dieu(神の雫)」も入っている。(ドミニック・シポのインタビュー「フランス俳句の達人たち」
http://www.franc-parler.jp/spip.php...)
この本を読むと、日本で生まれた俳文が、フランス語圏の俳人たちのそれぞれの感性によって新しい命を吹き込まれていることが実感できる。フランス語の俳文は、フランス文学の新たな可能性を示しているとともに、日本人にとって、俳文という日本の伝統的文学形式の価値を再認識させてくれるものでもある。俳文という古くて新しい文学の魅力を感じ取ることのできるアンソロジーである。