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オパル・クリヴェロ、脱原発組織「レゾー・ソルティール・デュ・ニュクレエール」広報担当
投稿日 2011年7月1日
最後に更新されたのは 2023年5月23日
脱原発
 
原子力関連事業はフランスと日本の交易上、大きな地位を占めています。例えば、アレヴァ社(国の株式保有率90%)は日本に対し核燃料MOXを提供しています。その関係から、福島原子力発電所の事故の後、放射能汚染水を除去するシステムを提供したり、使用済み核燃料などをフランスに引きとったりしています。こうした重大事は両国間の外交交渉レベルで話がすすめられます。というのも、現在日フランス大使は、フランス原子力庁の元理事でアレヴァ社の元取締役であり、在日フランス大使館には原子力部もあるからです。去る3月31日、来日したサルコジ大統領が東京で原発の安全性をPRしました。フランスの903団体から成る原子力推進反対派で脱原発組織「レゾー・ソルティール・デュ・ニュクレエール」の広報担当、オパル・クリヴェロ氏が、福島の事故以降のフランスの状況を語ります。
 

フラン・パルレ:あなた方は、今回の福島での原発事故を受けて、6月11日から反対運動をされています…
オパル・クリヴェロ:その通りです。パリだけでも5000人が集まりました。多くの政治家やメディアも集まり、大成功をおさめることができました。この活動が受け入れられて、大変嬉しく思っています。フランスでは、この反対運動は小規模ながら地方の都市でも起こりました。フランスは中央集権的な国です。確かにパリは地方の町よりも重視されます。しかし、福島での事故以来、フランス全土の人々の間に原子力の危険性に対する認識が高まっている事は確かです。実は、人口に対する原子炉数の割合で見ると、フランスはアメリカを押さえ、最も原子力化が進んでいる国なのです。これについてフランス人は、原子力の信頼性、確実性やフランスの技術力、原子力の工業分野における重要性に対して幻想を抱いています。私たちは長い間原子力の全能性を聞かされてきました。しかし福島の影響で、これに対する意識が高まってきているのです。3月11日の地震以降、パリでのソルティール・デュ・ニュクレエールの受け入れられ方を見ても、それは明らかです。集まった人々の数は、信じられない程の数です。30歳以下の若い人々がとても積極的ですね。彼らの活動の仕方は、70年代に高速増殖炉スーパー・フェニックスに反対した人々の「昔かたぎ」のやり方とは違っています。
 

フラン・パルレ:ドイツとイタリアでは、原子力に対する方針転換があり、今後、発電の手段として原子力を使用しないことが決められました。この出来事はフランスにも影響があるでしょうか。
オパル・クリヴェロ:もちろんです。フランスの人々の間で、とても良い影響があることは確かです。経済の分野で、ドイツはヨーロッパ第一の国ですし、もともとサルコジ大統領は、ドイツを大変評価しています。フランスではドイツは真似をしたい相手であり、環境保護運動のリーダーとして認めてもいるのです。ドイツ人は左右どちらの陣営に関わらず、エコロジー運動が盛んな国です。ドイツでエコロジーは単なる政治的な意見ではなく、暮らし方だと考えられています。ドイツの例から、私たちは原子力を手放すことができるとわかるのです。
 
フラン・パルレ:フランスはエネルギーの80%を原子力に頼っていますが、本当に原子力を手放すことができるのでしょうか。
オパル・クリヴェロ:もちろんです、ドイツやスペインを始め、再生可能エネルギーを強力に推進しているヨーロッパの国々の例からもわかる通り、それは技術的に可能なことなのです。課題は政治的な思惑だけです。政治家は、原子力を手放す気は全く持っていません。フランスでは原子力はもてはやされています。60年代以降、フランスで権力を握るひとにぎりのエリートたちが原子力政策を積極的に進めてきました。電力による暖房の拡大を口実にして、新しい原子炉の建設を押し進めてきました。そして原子力こそがフランスにエネルギー面での自立を実現させると言ってきたのです。しかもその頃はウランを使うことが自立だと言いましたが、実際には間違っています。ウランは100%輸入に頼っているのです。
 

フラン・パルレ:原子力推進派は、フランスでは地震の心配はなく、発電所は安全だと言っていますが…
オパル・クリヴェロ:今や、原子力発電所が本質的に安全であるなどとは言えなくなっています。原子力エネルギー自体が不安定なものだからです。つまり、核分裂の原理そのものが不確かで制御が利かないものなのです。それを無理矢理に制御しようとしているのです。技術がどんなに進歩したとしても、原子力発電所が安全になるということはないでしょう。フランスでは津波が起こらないというのも間違いです。1999年にヨーロッパ 全土を襲った暴風雨は多くの被害を出し、ボルドー近くにあるルブライエという原子力発電所は、浸水して危うく運転停止に陥るところでした。こういった事故はめったに起こるものではありませんが、実際に起こりうるのです。事故発生の確率はわずかでしょうが、もし起こってしまったら、被害は甚大になります。発電所建設の際に、事故が起こる可能性が顧みられることはなく、建設に影響を与えることもありません。次に地震地帯に関してですが、確かにフランスでは、地震地帯は日本に比べて格段に少ないです。しかし、日本では地震の脅威に対して経験を積み、危機管理に関する技術が目覚ましい進歩をとげていますが、私たちは地震に対する備えができてはいないのです。フランスでは、地震対策に関する技術など何一つないのです。地震が起これば、原子力発電所は一体どうするのでしょうか。私たちはそういったことについて何も知りません。自然の脅威に打ち勝つために、発電では耐久テストが行なわれていると良く言われます。しかし、この耐久テストは発電所の技術者たちが自ら行なうものです。例えるなら、学校で生徒を評価する際に、生徒が自分達で評価するようなものです。技術者たちが自分の発電所に対して判断するのですから。このように、フランスでは経験が不十分であるのに加え、耐久テストでは人的なミスが考慮に入れられてはいないのです。チェルノブイリを思い出して下さい。事故の原因は人的なミスで、技術的なものではなかったのです。また、テロリストの脅威も考えられてはいません。テロリストの脅威とはどういったものでしょうか。例えば悪意によって原子炉に飛行機を墜落させるといったことなど、いくらでも考えることができます。 福島の例は、原子力にも不確かな面があり、事故も起こりうるということを示しています。そうなると、実に様々な事態が想定されうるのです。
 
2011年7月
インタヴュー:エリック・プリュウ
翻訳:小林重裕
校正:村田聖子
 
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