

職人の父を持ち、女性や子供たちの生命力溢れる 姿を描いたピエール=オーギュスト・ルノワール(1841年 - 1919年)。銀行家の家庭に生まれ、人や自然を幾何学化し、1枚の絵に複数の視点を取り入れた独自の世界を表現したポール・セザンヌ(1839年- 1906年)……出自も性格も、そして絵画の表現もまったく異なる2人の作品が並ぶ。ルノワールの「花瓶の花」(1898年)の花々はリズミ カルに舞い、花瓶の質感までもが緻密に描写されている。 セザンヌの「青い花瓶」(1889年-1890年)は、青が基調のしんとした空気の 中、花の赤が際立つ。2人が追い求め行き着いた世界がいったいどこにあり、どのように異なるのかが一目瞭然だ。血の通ったふくよかな肌やふわ ふわした髪の質感が伝わってくるルノワールの人物画と、形や構図にこだわったセザンヌの作品の人物画もまた、異なる個性が私たちの心をとらえ (…)